痔を患っている人の多くは、トイレットペーパーで肛門を拭くのが苦痛になります。

トイレットペーパーで肛門を拭くと、痔の患部が擦れます。そうすると、強い痛みや出血などが起こりやすくなります。そのため擦ることなく痔の患部をキレイにできるウォシュレットは、痔を発症している人にとって必須となりつつあります。

ただウォシュレットの普及率は高くなってきたものの、日本中のどこにでもあるわけではありません。そのため場合によっては、ウォシュレットを使用できないことがあります。

また海外では、ウォシュレットがないところの方が多いです。そのため普段使うトイレがウォシュレットである人でも、仕事や旅行などで海外へ行くとトイレの洗浄機能を使えないことになります。

しかしながら「痔が痛むから」といって排便後の肛門をトイレットペーパーで軽く拭き取るだけで済ませてしまうと、後悔してしまうような事態になりかねません。

そのため痔を発症している人は、「ウォシュレットを使わなくても、苦痛なく肛門を綺麗にできる方法」を知っておく必要があります。そこでここでは、痔を発症している肛門を清潔に保つべき理由と、ウォシュレットなしで肛門をきれいに保つ方法について述べていきます。

なお本来ウォシュレットとは、TOTOが販売する温水洗浄便座の商品名です。ただウォシュレットは温水洗浄機能付きトイレを指す言葉として定着しているため、ここでは「ウォシュレット=温水洗浄機能付きトイレ」として記述しています。

痔を発症した肛門を清潔に保つべき理由とは?

肛門は便の通り道です。便には多くの細菌や有害物質などが含まれています。

そして、肛門には多くの細かい溝があります。このような部分には便が溜まりやすいです。そのため排便後の肛門は、かなり汚れているといえます。

このときいぼ痔や切れ痔など発症していると、いぼの陰や切れ痔の隙間などに便が入り込みやすいです。そのため痔の患部は、汚れの温床となりやすいのです。

ただ前述のように痔を発症していると、トイレットペーパーで肛門を拭くのがつらくなります。そのため痔を患っている人の多くは、痛みを怖がってトイレットペーパーでしっかり拭き上げることを避けます。

しかしながら、いい加減に肛門を拭くと肛門に汚れが溜まったままとなります。そしてこのような状態になると、かえって痔の痛みが起こりやすくなるのです。

痛みやかゆみなどが起こりやすくなる

痔による痛みやかゆみなどの症状は、患部が炎症を起こすことによって感じます。このような炎症は、もともと体を守るための反応です。

わたしたちのまわりには、数え切れないほど多くの細菌やウイルスなどが存在しています。これらの中には、人間に感染して命を脅かすものもあります。そのため人間の体には、病原体から体を守るための免疫という機能が備わっています。

体内に侵入した病原体は、「体を守る戦士」である免疫細胞によって排除されます。そのため病原体(敵)に感染するリスクの高い場所には、たくさんの免疫細胞(戦士)が集まって体を守ろうとします。

炎症は、このような免疫細胞を集める働きのある反応です。炎症が起こったときに生じている物質には、免疫細胞をおびき寄せる作用があるのです。

ただこのような物質には、わたしたちに痛みやかゆみなどを感じさせる働きもあります。そのため炎症が起こっている部分では、戦士(免疫細胞)たちの活動が活発になると同時に、痛み・かゆみが起こります。

このとき体にとって、便に含まれる細菌や有害物質などは外敵です。そのため肛門に便の拭き残しがあると、細菌などから体を守るために免疫細胞を集めようとします。つまり、炎症が起こって痛みやかゆみなどが起こりやすくなるのです。

このことから「痛いのが嫌だから」といって排便後の肛門をいい加減に拭き上げてしまうと、かえって症状がつらくなることがわかります。

痔そのものが悪化する

肛門に汚れが溜まっていると、痔による症状が重くなるだけではなく痔そのものが悪化しやすくなります。

前述のように、肛門に汚れが溜まると炎症が起こりやすくなります。そして炎症は体を守る反応です。

ただ一方で炎症が強すぎたり長引いたりすると、組織が正常に再生されにくくなったり壊れやすくなったりします。そのため肛門の汚れを放置していると、痔が悪化して治りにくくなります。

また肛門の炎症が強くなると、その分だけ痔による痛みが激しくなります。そうすると排便時の痛みも重くなり、排便が苦痛になります。

そしてこのような状態になると、便意を我慢してしまいやすいです。便意を我慢すると便の水分が体に吸収されて硬くなりやすくなります。硬くなった便は、強くいきまないと排便できません。

ただ強くいきむと、その分だけ肛門部分にうっ血が起こりやすくなります。いぼ痔は肛門部分のうっ血が原因です。つまり便秘になって強くいきむと、いぼ痔が悪化しやすくなるのです。

また硬い便を無理やり排便しようとすると、肛門に強い負担がかかって裂けやすくなります。このことから排便を我慢して便秘になると、いぼ痔だけではなく切れ痔も悪化しやすくなることがわかります。

したがって肛門に強い炎症が起こって痛みが強くなると、痔が悪化するリスクが高くなるのです。

取り返しの付かないことにつながることがある

いぼ痔や切れ痔などは自然に治る病気です。ただこれらの痔であっても、ひどく悪化してしまうと手術が必要となることがあります。

例えばいぼ痔が悪化すると、肛門部分に握りこぶし大のいぼができた状態になることがあります。そうなると肛門に激しい痛みが起こって、座ったり歩いたりすることが難しくなります。

基本的にいぼ痔が悪化しても、薬を使ったり生活を改善したりすることによって1ヶ月程度で良くなります。

ただこれを言い換えると、悪化したいぼ痔を手術なしで治すためには「動けないほどの激しい痛みを耐える生活を1ヶ月も送る必要がある」ということを意味するのです。そのためここまでいぼ痔が悪化すると、ほとんどの人が手術を選びます。

また切れ痔が悪化すると、切れ痔部分が深くなって潰瘍化します。そうすると切れ痔が治りにくくなったり切れ痔を繰り返しやすくなったりします。

切れ痔を繰り返すと、肛門の皮膚部分にたくさんの傷跡ができます。このような傷跡は、左右の皮膚が引っ張られる形で生じます。そのため切れ痔を繰り返して傷跡が増えると、その分だけ肛門が狭くなっていきます。これを肛門狭窄といいます。

肛門狭窄は命に関わる病気ではありません。ただ肛門狭窄が起こると、便を排出しにくくなるため排便に時間がかかるようになります。

肛門狭窄が重症になると、鉛筆の太さの便しか出せずに排便に数時間かかることがあります。またこのような状態になると、排便時に強い痛みを伴うようになります。

肛門狭窄は自然に治る症状ではありません。そのため肛門の状態が悪化・慢性化して肛門狭窄が起こると、手術をしなければならなくなります。

いぼ痔や切れ痔などの手術では、痔の患部を切り取ります。そのため痔の手術が行われると、手術前と全く同じ状態には戻れません。

また切り取られる痔の患部のすぐそばには、肛門括約筋などの筋肉組織が存在しています。

皮膚や粘膜などは手術によって切られても、自然に治っていきます。そのため手術によって痔の患部を切り取られても、肛門機能に影響が出ることは少ないです。

一方で筋肉組織は、一度切られるときれいに修復されません。そのため手術によって肛門括約筋などの筋組織が切断されると、肛門機能が低下しやすくなります。

肛門機能が低下すると、便をうまく排出できなくなったり肛門から漏れたりなどの後遺症が起こります。多くの場合後遺症は別の手術によって改善されます。ただ場合によっては、一生後遺症と付き合っていくこともあります。

ウォシュレットなしで肛門をきれいにする方法

排便後に肛門を拭く際、「トイレットペーパーに便がつかないから、肛門はきれいである」と思う人は多いです。

ただ実際には、便に含まれている細菌や有害物質などは目に見えません。そのため肛門には目に見えない汚れが多く溜まっています。

このような汚れは、座浴などで肛門をぬるま湯で洗い流すことによって落とすことができます。そのため痔を発症している人には、排便後に座浴を行うことが推奨されています。

ただほとんどの人は、排便のたびに座浴することはできません。このようなことから開発されたのがウォシュレット(温水洗浄便座/シャワートイレ)です。

ウォシュレットを使うと、トイレットペーパーでは拭ききれない肛門の汚れを洗い流すことができます。ただ前述のように、場所によってはトイレがウォシュレットではないところがあります。そのため痔を発症している人は、ウォシュレットなしで肛門を清潔にする方法を身に着けておくことが大切です。

市販の清浄剤を使う

痔の患部をトイレットペーパーで直に拭く際の痛みは、肛門用の清浄剤を使うことによって和らげることができます。

例えば泡ジーケア(ムネ製薬)やサニーナ(花王)などは、清浄剤が泡状で出てきます。

泡には汚れを落とす力があるだけではなく、肛門の溝に溜まった汚れも吸着してくれます。そのためこれらを使うと、肛門をきれいに保ちやすくなります。

また泡ジーケアには、ベンザルコニウムという消毒成分が含まれています。

そのため泡ジーケアを使うと、便に含まれる細菌の悪影響を減らすことができます。

さらにこの商品には炎症を抑える成分や組織の修復を助ける成分なども含まれています。そのため泡ジーケアを使うと、痔による痛みが緩和されやすくなったり痔が治りやすくなったりします。

またサニーナには、グアイアズレンという炎症を抑える成分が含まれています。

そのためサニーナを使うと、痔の痛みやかゆみなどが鎮まりやすくなります。

これら2つの商品のうち、泡ジーケアは医薬品です。そのため、ドラッグストアなどの薬を取り扱っている店でなければ購入できません。

一方でサニーナは医薬部外品であるため、薬の取り扱いのないスーパーなどでも購入できます。この場合、サニーナは生理用品や大人用おむつなどのコーナーにあることが多いようです。

デリケートゾーン用ウェットティッシュを使う

ウェットティッシュなどの濡れた紙は、トイレットペーパーなどの乾いた紙よりも摩擦が起こりにくいです。そのためウェットティッシュで痔の患部を拭くと、トイレットペーパーを使った場合よりも痛みを感じることなく肛門をきれいにできます。

ただ一般的なウェットティッシュの中には、消毒用アルコールが含まれているものがあります。そしてアルコールは傷にしみる成分です。そのため消毒用アルコールが含まれているウェットティッシュで痔の患部を拭くと、強い痛みを生じることがあります。

これに対してデリケートゾーン用のウェットティッシュには、アルコールなどの傷口に刺激を与える成分が含まれていません。そのためこのようなウェットティッシュで痔の患部を拭いても、しみることはありません。

またデリケートゾーン用のウェットティッシュは他のものよりも厚手になっており、含有される水分量も多めになっています。そのためデリケートゾーン用のウェットティッシュを使用すると、患部を優しく拭き上げることができます。

そしてデリケートゾーン用ウェットティッシュの多くは、そのままトイレに流せる設計となっています。

このことから痔の患部を拭きたいのであれば、通常のウェットティッシュよりもデリケートゾーン用のウェットティッシュを選ぶべきだといえます。

なおデリケートゾーン用のウェットティッシュは、スーパーなどの生理用品コーナーで購入することができます。

赤ちゃん用のおしりふきを使う

痔の患部は赤ちゃん用のおしりふきで拭くこともできます。

赤ちゃんの肌は大人に比べて敏感です。そのため赤ちゃん用のおしりふきには、肌に負担となるような成分が含まれていません。したがって敏感肌の大人であっても、問題なく使用することができます。

さらに多くのおしりふきには、肌を守る保湿成分が含まれています。そのためおしりふきを利用すると、痔の患部をやさしくきれいに拭き上げることができます。

また前述したデリケートゾーン用のウェットティッシュは、小さなお店だと取り扱われていないことが多いです。

これに対して赤ちゃん用のおしりふきは、スーパーやホームセンター、ドラッグストア、100円ショップなどのさまざまなお店で販売されています。そのため赤ちゃん用のおしりふきは、デリケートゾーン用のウェットティッシュよりも手に入れやすいです。

またデリケートゾーン用のウェットティッシュは12枚入りで200円程度です。そのため排便のたびにこのウェットティッシュを使うと、経済的な負担がかかります。

これに対して赤ちゃん用のおしりふきは、180枚入りで500円程度です。これはデリケートゾーン用ウェットティッシュの1/6程度の価格です。

このことから赤ちゃん用のおしりふきは、デリケートゾーン用のウェットティッシュよりもかなりコストパフォーマンスが良いことがわかります。そのため自宅にウォシュレットがなかったり長期でウォシュレットのない環境の場所へ行ったりする場合は、おしりふきを利用する方が経済的であるといえます。

このとき、おしりふきは厚手という記載のあるものを選ぶようにしましょう。

そうすることで痔をやさしく拭きやすいものを購入することができます。またおしりふきの中には、トイレに流せないタイプのものが多いので注意が必要です。

携帯ウォシュレットを使う

これまでに述べたように水分量の多いウェットティッシュなどを使うと、痔の患部を拭く際にも痛みを感じにくくなります。ただ中には「ぬるま湯で洗わないと落ち着かない」という人もいることでしょう。このような人は、携帯ウォシュレットを使うことをおすすめします。

携帯ウォシュレットには、手動タイプと電動タイプのものがあります。これらはどちらも温水洗浄機能付きトイレを使ったときと同様に、肛門に勢い良く水をかけることができるアイテムです。

手動の携帯ウォシュレットには、付属しているボトルに水を入れるタイプやペットボトルを装着して使うタイプなどがあり、その多くが1000円弱で購入できます。

ボトルに水を入れるタイプの携帯ウォシュレットを使う場合、ものによっては水漏れを起こすことがあります。そのためこのタイプの携帯ウォシュレットを使う場合は空の状態で持ち歩き、使用の直前に水を入れるようにすると安心です。

またペットボトルに装着するタイプの携帯ウォシュレットでは、ペットボトルを押しつぶして水を放出させます。

このとき硬めのペットボトルを使用すると、水が上手く出せずに水圧が足りなくなることがあります。したがってこのタイプの携帯ウォシュレットを使う場合は、柔らかめのペットボトルを選ぶことが大切です。

またミネラルウォーターなどのペットボトルの中には、潰した時にクシャクシャと音が鳴るものがあります。このような音が気になる場合は、炭酸飲料などの「柔らかいけれども潰れないペットボトル」を選ぶようにしましょう。

電動の携帯ウォシュレットは複雑な構造をしている分だけ、手動のものよりも価格が高めとなっています。具体的にいうと、5000円以上するものが多いです。

ただ電動の携帯ウォシュレットは手動のものに比べて水圧が高く、温水洗浄機能付きトイレを使ったときと同等程度の使い心地を得られます。

特に、温水洗浄付きトイレの代名詞となっている「ウォシュレット」のメーカーであるTOTOから販売されているものは、口コミでの評価も高いです。中には「人生が変わった」との声もあります。

そのため痔の症状がつらく、温水洗浄便座のないトイレが苦痛になるような人は、電動の携帯ウォシュレットを検討してみることをおすすめします。

一方で「携帯ウォシュレットを使いたいけれども、とにかく安価に済ませたい」という人は、100円ショップなどで売られているキッチンディスペンサーを使うという手もあります。

キッチンディスペンサーの中には、柔らかめのプラスチックでできているものがあります。

このようなものを選ぶと、手動の携帯ウォシュレットと同じ感覚で肛門を洗うことができます。

またキッチンディスペンサーはボトルを押しつぶして使うものであるため、硬めのペットボトルを使用したときよりも容易に使うことができます。

まとめ

痔を発症している人にとってウォシュレットは、なくてはならない必需品となっています。ただウォシュレットがかなり普及している日本であっても、場合によっては温水洗浄機能のないトイレを使わざるを得ないことがあります。

このとき「痛いから」といって肛門をいい加減に拭いてしまうと、痛みがひどくなったり痔が悪化したりしやすくなります。場合によっては、取り返しのつかない事態に発展してしまうこともあります。

そのため痔を発症しているのであれば、ウォシュレットなしで肛門をきれいにする方法を知っておくことが大切です。

そしていざというときのために、自分に合った肛門洗浄アイテムをかばんに忍ばせておくようにしましょう。そうすることで、ウォシュレットがないという緊急事態にもうまく対応できるようになります。