一般的に痔は、温めた方がいいといわれています。実際にいぼ痔や切れ痔などは、温めることによって症状が軽くなったり痔が治りやすくなったりします。

ただ痔の治療に使われるものの中には、ポスクールという医療機器があります。これはいぼ痔を治療することを目的とした冷却棒です。

このとき「いぼ痔を温めることによって症状が改善するならば、ポスクールを使うといぼ痔が悪化するのではないか」と思う人は多いです。ただ実際には、ポスクールはいぼ痔による痛みを和らげていぼ痔そのものを治しやすくします。

では、温めると症状が改善されるはずのいぼ痔が、なぜポスクールで良くなっていくのでしょうか? またポスクールはどこで手に入り、どのようにして使うのでしょうか?

そこでここでは、ポスクールによって痔が改善される理由とポスクールの使い方などについて解説していきます。

いぼ痔を温めるべき理由とは?

日本では昔から、温めることの大切さが説かれてきました。

例えば冷え性という概念は、欧米には存在しません。また「体を冷やすと風邪を引きやすくなる」という考え方も理解されにくいです。このことから欧米では、体が冷えることに対してそれほど危機感を覚えないことが推察されます。

これに対して日本では、「冷えは万病の元」といわれています。また肩こりなどが起こったら、こっている部分を温める人も多いです。そのため体や痛い部分などを温めることは、日本人にとって身近なことであるといえます。

このとき「いぼ痔は温めた方がいい疾患である」ということは、さまざまな情報媒体でいわれています。そしてこれは事実です。

実際にいぼ痔を発症している人であれば、入浴によっていぼ痔の症状が軽くなった経験があることでしょう。これは入浴によっていぼ痔の患部や体などが温まったためです。

温めることによる血流促進効果

わたしたちの体は、温めると血管が広がります。

例えばカイロなどを皮膚に当てておくと、数分後には皮膚がピンクや赤色などを帯びるようになります。これはカイロによって皮膚が温まり、血管が広がったためです。

血管が広がると、その分だけ流れる血液の量が増えます。そのため組織を温めると、温めた部分の血行が良くなります。したがって皮膚を温めると、その部分の血色が良くなって皮膚の赤みが増すのです。

このことようなから、肛門を温めると痔の患部の血行が良くなることがわかります。

また入浴などによって全身が温まると、全身の血液の巡りが良くなります。全身の血行が改善されると、その分だけ肛門の血行も良くなります。そのため全身を温めると、痔の患部の血行が良くなります。

いぼ痔の原因の一つは血行不良

いぼ痔とは肛門クッションに多くの血液が溜まり、腫れ上がっていぼを形成する病気です。正確には痔核(じかく)といいます。

肛門クッションはもともと、血液が流れ込みやすい組織です。これは肛門クッションがパッキンの役割を果たす組織であるためです。

例えば水道管や水筒などは、パッキンがなくなると水漏れが起こるようになります。パッキンがあると水漏れが起こらないのは、パッキンに柔軟性があるためです。柔らかさが栓の密着度を向上させ、水漏れを防いでいます。

これと同様に肛門クッションには便漏れを防ぐために、血液が流れ込みやすい構造となっています。肛門クッション内の血液を多くすることによって、柔らかさを維持しているのです。

また肛門は胴体の底に位置しています。そのため立っている状態では、血液が下半身の方向へ引っ張られる状態となります。したがって立っている時間が長いと、その分だけ肛門組織に血液が流れ込みやすくなります。

また座位であっても、肛門は胴体の底となります。そのため座位も立位と同様に、血液が肛門に溜まりやすい姿勢です。

さらに排便のときには、便を排出するために腹部に力を入れます。そうすると肛門に圧力がかかり、肛門クッションへ多くの血液が流れ込みます。このようなことから人間の体は、肛門クッションに血液が流れ込みやすい性質となっています。

このとき肛門クッションに流れ込んだ血液が体内へ戻ることができれば、肛門クッションに血液が溜まることはありません。つまりいぼ痔が発症しないということです。

一方で肛門クッションから血液が流れ出ていかないと、肛門クッションに血液が溜まっていきます。その結果、肛門クッションが腫れ上がっていぼ痔を発症します。このことから血液の流れる力が弱い=血行が悪いといぼ痔を発症しやすくなることがわかります。

そして前述のように、温めると血行が改善されやすくなります。このようなことからいぼ痔は温めることが推奨されているのです。

なぜいぼ痔を冷やす医療機器があるのか?

いぼ痔の治療を受けた人の体験談では、ポスクールという単語を見聞きすることがあります。ポスクールとはマルホ株式会社から販売されている、いぼ痔治療用の一般医療機器です。

ポスクールは竹刀のような形をしており、竹刀の剣に相当する部分を肛門の中に挿入して使います。肛門に挿入される部分には冷却剤が入っており、これによっていぼ痔を冷やします。

このとき医療機器は、効能効果が認められなければ販売することができません。このことから医療機器として販売されているポスクールには、「いぼ痔の症状を改善させる効果がある」のは事実であることがわかります。

ポスクールはなぜいぼ痔の痛みを軽くするのか?

ポスクールの添付文書では、使用目的が内痔核と外痔核、嵌頓痔核となっていることが確認できます。

内痔核(ないじかく)とは、直腸側のクッションが腫れて生じたいぼ痔のことです。また外痔核(がいじかく)は、肛門外側のクッションが腫れたものを指します。

内痔核と外痔核では、どちらも組織に炎症が起こっています。炎症が起こると、組織に痛みやかゆみなどを感じさせる物質が放出されます。また炎症が鎮まると、痛みを感じさせる物質の放出量が少なくなるため痛みが引きやすくなります。

実際に外痔核には激しい痛みを伴います。これは外痔核を生じる組織には、痛みを感じる神経が多く通っているためです。そのため外痔核は炎症が強くなるほど痛みが重くなります。

一方で内痔核を生じる組織には、痛覚がありません。そのため内痔核を発症しただけでは、痛みが起こることはありません。

ただ内痔核が進行して大きくなると、肛門から飛び出るようになります。これを脱肛(だっこう)といいます。内痔核が脱肛するようになると、肛門外側の組織に触れるようになるため痛みを感じるようになります。

そして内痔核が脱肛するようになると、嵌頓痔核に発展することがあります。

嵌頓痔核(かんとんじかく)とは脱肛した内痔核の中に血豆(血栓)ができ、大きく腫れ上がったいぼ痔のことをいいます。場合によっては、握りこぶしサイズまで大きくなることがあります。

嵌頓痔核を発症すると、炎症が痛覚のある部分まで広がるようになります。そのため嵌頓痔核を発症すると、動けなくなるほどの痛みを感じるようになります。

このとき炎症は、温めると悪化して冷やすと鎮まるという性質があります。そのため炎症が起こっている組織を温めると、痛みが強くなることがあります。

一方で炎症を冷やして鎮めると、痛みが緩和しやすくなります。そのため肛門の中を冷やす機能のあるポスクールは、外痔核や嵌頓痔核などの痛みを軽減するのです。

ポスクールがいぼ痔の改善に効果を発揮する理由

ポスクールはいぼ痔による痛みを和らげるだけではなく、いぼ痔そのものを改善する働きもあります。

前述のようにいぼ痔は、血行不良によって起こります。そのためいぼ痔を改善するためには、血液の巡りを改善することが大切です。

このとき血管は、冷やすと収縮します。そしてポスクールは肛門内を冷やす医療機器です。そのためポスクールを肛門内に挿入すると肛門の中が冷たくなり、肛門の血管が収縮して血液が流れにくい状態となります。

ただポスクールは、ずっと肛門を冷やし続けるわけではありません。ポスクールは肛門にいれた後、5分後に取り出します。そのためポスクールによって肛門が冷やされるのは、5分間という短い間だけです。

冷却によって収縮した血管は、冷却をやめると広がります。このとき冷やす温度が低いほど、冷却をやめたときに反動によって血管が広がりやすくなります。

例えば寒い冬の日に手足を出していると、手足の皮膚表面の温度がかなり低くなります。このような状態で温かい室内に入ると、冷たくなっていた部分が普段よりも熱くなります。

また熱くなっている部分は赤みを帯び、血行が良くなっている様子が確認できます。これは冷やされることによって収縮した皮膚表面の血管が、温かい室内で急激に広がることによって起こります。

これと同様にポスクールを使用し終えると、肛門の血管が広がって血行が良くなります。その結果、いぼ痔が治りやすくなっていくのです。

ポスクールはどのようにして手に入れる?

いぼ痔によって肛門に痛みが起こっていると、日常生活が困難になります。

例えばいぼ痔を発症している状態で座ると、いぼ痔がつぶされて痛みを生じます。そのため痛みを伴ういぼ痔が起こると、円座クッションなどなしでは座れなくなります。

またいぼ痔が起こっている状態で歩くと、いぼ痔がおしりと擦れます。したがっていぼ痔の痛みが激しくなると、まともに歩けなくなります。

このとき前述のように、ポスクールはいぼ痔の激しい痛みを軽減しながらいぼ痔そのものを改善していきます。そのため痛みの激しいいぼ痔を発症している人は、ポスクールを使ってみたいと思っていることでしょう。

ただポスクールは、簡単に手に入れることはできません。これはポスクールが市販されていないためです。

ポスクールは病院で受ける処置の一種

ポスクールは病院での処置の一種に位置づけられており、一般人が手に入れることができるものではありません。そのためポスクールを使うためには、病院で痔の治療を受ける必要があります。

またポスクールによるいぼ痔の治療は、一般的によく行われていることではありません。

多くの場合いぼ痔で病院にかかると、痔に塗ったり肛門に挿入したりする外用薬が処方されます。そのためポスクールは、どの病院でも受け取れるものではありません。

特に痔は、肛門以外の専門をもつ内科医や外科医などが行うことの多い疾患です。そしてこのような専門外の病院では、一般的な痔の薬しか置いていないケースがほとんどです。

例えば肛門科を掲げている病院であっても、胃腸科も同時に掲げている場合は、胃腸科の専門医が診ている可能性が高いです。

具体的にいうと胃腸科と掲げている病院は、胃腸を治療するための設備が整っていても肛門を治療するための設備は整っていないことが多いのです。

一方で肛門科や肛門外科のみを掲げている病院では、痔の治療に対して幅広い選択肢を用意しています。そのためこのような病院はポスクールが手に入りやすいです。

したがってポスクールが欲しいのであれば、肛門科または肛門外科のみを掲げている病院に行くようにしましょう。

ポスクールの使い方

ポスクールは冷凍庫に5時間以上いれてしっかり凍らせてから使います。そのためポスクールを受け取ったら、冷凍庫で保存するようにしましょう。このときポスクールは、個包装を開けずに冷凍することが大切です。

ポスクールを規定時間冷やして凍結させたら、肛門の中に5分間挿入することができます。ただポスクールをそのまま肛門内に入れると、肛門が傷つくことがあります。そのためポスクールを挿入する際には、挿入部分に潤滑剤を塗るようにしましょう。

このとき性行為に使用されるような潤滑ゼリーや潤滑ローションなどを使用すると、ポスクールを挿入しやすくなります。このようなものを手に入れられない場合は、薬店などで白色ワセリンなどの軟膏を使用してもかまいません。

またポスクールの挿入は、肛門が緊張しにくい姿勢で行うことが大切です。肛門が緊張するとポスクールを挿入しにくくなります。そのためポスクールは、寝転がってリラックスした状態で挿れましょう。

ポスクールを挿入する際には、ツバ部分が肛門に当たるまでしっかり差し込みます。そして挿入後は動かず、安静にしていることが大切です。

なおポスクールは再利用できません。そのため使ったポスクールはゴミとして廃棄しましょう。

ポスクールが余ったらどうしたらいい?

前述のようにポスクールは、医師の診断を受けなければ手に入れることができません。そのためポスクールは、「ポスクールを使うべき痔であるとき」に手元にあるはずです。

ただいぼ痔の状態や生活習慣などによっては、ポスクールを使い終える前にいぼ痔が治ることがあります。この場合、ポスクールが余ることになります。

このとき病院からもらった薬や医療機器などが余っても、「もったいない」といって処分しない人はかなり多いです。そしてこのような人は、同じ症状が現れたらまた薬・医療機器を使おうとしています。

ただ病院からもらった薬や医療機器などは、病気が治ったら処分するのが基本です。これは余った薬や医療機器などが使用に適切な病気かどうかは、医者しか判断できないためです。

薬や医療機器などには、病気を治すための働きがあります。ただこのような働きは、正しく使われないとかえって有害となることがあります。そのため自分の痔が「ポスクールに適さない痔」である場合、ポスクールを使用すると症状が悪化する可能性があります。

また前述のようにポスクールは、いぼ痔を治すために設計された医療機器です。そのためポスクールに切れ痔を治す効果を期待することはできません。

実際に切れ痔は、ポスクールの冷却効果が届かない位置に生じることがあります。冷却効果が届かなければ、切れ痔の状態は変わりません。

そして痔の王様と呼ばれるあな痔は、病院で手術を受けなければ治りません。そのためあな痔の痛みをポスクールでごまかしていると、処置が遅れてあな痔が重症化しやすくなります。

あな痔が悪化すると、その分だけ手術が難しい病態となります。またあな痔はがんに発展することもあります。このようなことからポスクールが余ったら、自己判断で取っておかないことが大切です。どうしても捨てられない場合は、医師に相談しましょう。

ポスクール以外の方法でいぼ痔を冷やしてもいいのか

前述のようにポスクールは、メジャーな痔の治療方法ではありません。そのためポスクールを使って痔の症状を和らげたいと思っても、なかなか手に入らないことがあります。

このとき前述のように、痔の痛みは炎症によって起こっています。そして炎症は冷やすことによって鎮まりやすくなります。そのためポスクールが手に入らなかった人の中には、痔の痛みを改善するために自分で肛門内を冷やそうとしてしまうケースがあります。

ただ基本的にいぼ痔は、温めることが推奨される痔です。実際に肛門内を中途半端に冷やすと、ポスクールを使ったときのような痛みの軽減や血管の拡張などは起こりません。このような状態になると、いぼ痔が良くなるどころかかえって悪化する可能性があります。

また肛門内を冷やしすぎると、凍傷が起こるリスクがあります。さらに冷却が腹部にまで及ぶと、腹痛や下痢などが起こる危険性もあります。

そして肛門内部は粘膜であるため、皮膚などよりも傷つきやすいです。そのため肛門に「本来挿れるべきではないもの」を挿れると、肛門内部が傷つきやすくなります。

またポスクールのようにツバ部分がないと、肛門奥まで入り込んで自分では取り出せなくなる危険性もあります。そうなると病院で処置を受けなければならなくなります。

このようなことからポスクールが手に入らなくても、自己判断でいぼ痔を冷やすことはやめるべきだといえます。

まとめ

基本的にいぼ痔は、温めることが推奨されている疾患です。そのため肛門内に挿入する冷却棒であるポスクールは、いぼ痔を悪化させそうな印象を受けます。

ただポスクールはいぼ痔を改善するために設計されている医療機器です。そのためポスクールを使用すると、いぼ痔による痛みが軽くなったりいぼ痔そのものが改善したりしやすくなります。

しかしながらポスクールは、ドラッグストアなどで販売されている商品ではありません。ポスクールを手に入れるためには、肛門の専門医に診てもらう必要があります。そのため痔の痛みをポスクールで改善したい人は、肛門科の専門医がいる病院に行きましょう。

このとき医師からもらったポスクールが余ったとしても、自己判断で使ってはいけません。ポスクールを使いたいときは、必ず専門医の指示を仰ぐようにしましょう。そうすることによってポスクールを適切に正しく使うことができます。