痔の市販薬は、さまざまな会社から販売されています。

このうちの1つであるリシーナは、パッケージデザインが女性向けに作られています。そのため痔の薬を買う時、リシーナを選ぶ女性は多いです。

また妊娠中や産後などは、痔が起こりやすい時期です。そのため小さな子どもをもつ母親の中には、リシーナを所持している人がいるでしょう。

このとき親用の飲み薬を子どもに与える親はそう滅多にいません。一方で塗り薬は、親子で共有されることが多いです。そのためリシーナが手元にある場合、子どもの痔に使用しようと考える人がいます。

ただリシーナにはいくつかのタイプがあり、中には子どもに使えないものもあります。

また痔の種類によっては、薬を使ってはいけないケースもあります。そのため子どもに痔の薬を使う場合は、症状をよく観察した上で適切な薬を選ぶ必要があります。

では、どのようなタイプのリシーナであれば子供の痔に使えるのでしょうか? また子供にどのような症状が出ていた場合、薬を使用してはいけないのでしょうか?

そこでここでは子供の痔について解説し、子供に使えるリシーナの種類について述べていきます。

子どもに起こりやすい痔とその症状

一般的に痔は、大人の病気であると思われがちです。ただ実際には、子どもも痔になることがあります。

このとき痔を生じたのが言葉を話せる年齢の子どもであれば、痔による症状を親に伝えることができます。そのため親が子どもの痔を認識することができ、すぐに対処することができます。

一方で言葉を話せない年齢の子どもは、痔の痛みなどを親に伝えることができません。そうすると親が子どもの痔に気付くことができず、子どもが痛みを我慢することになりやすいです。

ただ痔によって肛門部に痛みを生じると、排便がつらくなります。

このとき大人であれば、「便秘は良くない」ということを理解しています。そのため痔による痛みを生じていても、なんとかして排便しようとします。

一方で小さな子どもは、便秘が良くないことだということを知りません。そのため排便に痛みが伴うと、痛みを避けるために排便を我慢するようになります。

排便を我慢すると、その分だけ便秘になりやすくなります。便秘は痔の発症や悪化などの大きな原因の1つです。そのため小さな子ども痔に対しては、なるべく早く親が気付いて対処する必要があるのです。

痔の種類と原因

痔にはいぼ痔と切れ痔、あな痔の3種類があります。これらのうち、子どもにもっとも多い痔は切れ痔です。

・切れ痔

切れ痔(裂肛)とは肛門の皮膚部分が裂ける病気です。つまり切れ痔とは、肛門にできた裂け傷です。そのため切れ痔では、手足に傷ができたときと同様にじんじんとした痛みを伴います。

また手足などにできた傷口を触わると、ビリビリとした強い痛みを感じます。これと同様に切れ痔が起こると、排便時に切れ痔部分と便が擦れると激しい痛みが起こるようになります。

多くの場合、切れ痔は便秘によって起こります。特に子どもの切れ痔は、便秘によって起こるケースが多いです。

便秘になると便の水分量が低下して硬くなります。そうすると、排便時に硬い便が肛門を無理やり通過することになります。

紙や布などを強く引っ張ると裂けるのと同様に、肛門も無理に広げられると裂けやすくなります。そのため便秘になっていると、裂け痔を生じやすくなるのです。

・いぼ痔

いぼ痔(痔核)は、小さな子どもにはほとんど見られない病気です。これはいぼ痔が、慢性的な便秘によって起こるものであるためといわれています。

いぼ痔とは肛門部分にうっ血が起こることによって生じます。このようなうっ血は、排便時に強くいきむと起こります。ただ通常いぼ痔は、排便によって数回強くいきんだだけで発症するものではありません。何度も強くいきんだ結果、起こりやすくなるのです。

このとき小さな子どもは、大人に比べて便秘歴が短いです。そのため子どもは、大人よりも強くいきむ機会が少なくなります。このようなことから、小さな子どもにいぼ痔が起こることはほとんどないのです。

ただ中学生くらいの年齢になると、便秘歴の長い人が増えてきます。そのため中学生や高校生などには、大人と同様にいぼ痔が起こることがあります。

・あな痔

あな痔(痔ろう)は肛門と直腸の境目に存在している肛門腺窩(こうもんせんか)という穴に便が入り込むことによって起こります。

便には細菌が多く含まれています。そのため肛門腺窩に便が入り込むと、肛門の奥にある肛門腺という組織で細菌が増殖しようとします。

通常肛門腺に入り込んだ細菌は、体に備わっている免疫によって排除されます。ただこのとき免疫機能の働きが追いつかないと、肛門腺に細菌感染が起こります。

そうすると、細菌などの死骸が膿を形成しておしりの内部を流れ進んでいきます。そして膿がおしりの皮膚まで流れ着くと、おしりに穴が開いてここから膿が排出されるようになります。膿の通り道が直腸にたどり着くと、直腸に穴が開くことになります。

このような膿の通り道は、自然に治ることはありません。そのため通常、あな痔を発症すると手術なしでは治らなくなります。

子どものあな痔はまれであるものの、切れ痔についで多いタイプの痔です。

また子どものあな痔は、大人のものとは異なる点が多くあります。そのため子どものあな痔は、乳児痔ろうまたは幼児痔ろうと呼ばれ、大人のあな痔とは区別されています。

乳児痔ろうとは?

大人のあな痔では、膿の通り道ががおしりの皮膚や直腸などにつながります。また膿の出口は肛門の背中側にできることが多いです。これに対して子どものあな痔は、肛門の横側に膿の出口ができます。また膿の通り道もおしりの浅い部分に生じます。

さらに大人のあな痔患者は男性の方が多いものの、女性があな痔になることもあります。一方で乳児痔ろうのほとんどは男児に起こり、女児が発症するのはかなりまれです。

そして大人のあな痔は手術なしでは治らない病気である一方で、乳幼児のあな痔は自然に治る病気です。このようなことから、大人のあな痔と子どものあな痔はどちらも「痔ろう」であるものの、別の病気であるとされています。

乳児痔ろうの原因は、詳しくはわかっていません。ただ基本的に男の子に発症する病気であるため、男性ホルモンの影響が原因の1つだと考えられています。

また乳児痔ろうの中には、おむつかぶれによるおしりの化膿が含まれることがあります。このような症状は厳密には痔ろうではないものの、便宜上乳児痔ろうとされることが多いようです。

ただどちらにしろ、おしりに化膿が起こると強い痛みが起こります。また発熱が起こることもあります。

そうすると子供が泣きっぱなしになったり、排便を嫌がったりしやすくなります。そのため「乳児痔ろうかもしれない」と思ったら、放置せずに病院へ連れて行く必要があります。

市販薬を使ってはいけない痔の見分け方

痔にはつらい症状を伴います。そのため子どもに痔が起こると、ほとんどの親は症状を楽にしてあげたいと思うことでしょう。

ただ痔を治すために薬を使っても、場合によっては痔が悪化してしまうことがあります。これは痔の薬の中には、免疫を抑える作用をもつものがあるためです。

前述のように乳児痔ろうでは、おしりに化膿が起こっています。化膿が起こっているということは、組織が細菌に感染しているということです。

組織に入り込んだ細菌を排除するのは、免疫機能の仕事です。

そのため薬によって免疫の働きが抑えられると、細菌が繁殖しやすい状況となります。つまり化膿が悪化するのです。このことからあな痔には、免疫を抑制するタイプの痔の薬を絶対に使ってはいけません。

また子どもの痔があな痔である場合、免疫を抑制するタイプのものではない薬も使うべきではないといえます。

まずこのような薬の作用は、そう強くありません。そのためこのタイプの薬を使っても症状が緩和しないことがあります。また薬が効いても、その効果は長続きしません。

そしておしりに膿が溜まりすぎると、外科的処置を受けなければ膿を排出できなくなります。このようなことからも子供の痔があな痔である場合、薬を使用せずに病院で処置をうけるべきだといえます。

おしりの横に穴がある場合

あな痔では、おしりの中で生じた膿がおしりの皮膚などから排出されます。そのためおしりからの膿の排出は、あな痔を見つけるための代表的な症状となります。

ただ乳幼児は体が小さいため、排出される膿の量が少ないです。

また大人であれば、下着に付着した膿であな痔を疑うことができます。ただ乳幼児はおむつをしているため、膿が尿や便などが混じりやすくなります。そのため乳児痔ろうでは、膿の排出という症状を見つけることが難しいです。

しかしながら乳児痔ろうは、肛門の右側もしくは左側に膿の排出口ができます。そのためオムツ替えの際などに肛門横の小さな穴を見つけたら、あな痔を発症している可能性が非常に高いです。

したがってこのような症状が出ているのであれば、痔の薬を使わずに病院ヘ連れて行くようにしましょう。

おしりが赤く腫れ上がっている場合

乳幼児の体は、大人に比べて小さいです。そのため痔ろうによる膿の出口もかなり小さく、しっかり見ないと見落としてしまうことがあります。

ただ膿が溜まっているところは赤く腫れ上がり、触ると痛みを感じるようになります。そのため肛門の横側が赤く腫れており、触ると嫌がるようであれば、乳児痔ろうを疑う必要があります。

このときおしりは、おむつかぶれなどによっても腫れることがあります。

ただあな痔である場合、腫れている部分をつまむと膿が出てきます。そのためおしりの腫れた部分から膿が出てくるようであれば、市販薬を使わないようにしましょう。

どのような症状ならば薬を使ってもいい?

子どもに切れ痔ができているとき、肛門を横に開くと「あかぎれのような細かい傷」を確認することができます。多くの場合、このような傷は肛門のおなか側や背中側などに起こります。

また切れ痔が悪化すると、「見張りいぼ」と呼ばれる皮膚のたるみを生じることがあります。見張りいぼはスキンタグとも呼ばれ、いぼ痔と間違えられやすい症状です。

ただ前述のように、乳幼児にいぼ痔が起こることはほとんどありません。そのため乳幼児の肛門に出来物ができている場合は、切れ痔が起こっている可能性が非常に高いです。

このことから、肛門部分に赤い亀裂が走っていたり小さな出来物を生じていたりする場合は、痔の薬で症状を和らげてあげるようにしましょう。

子供に使えるリシーナはどれ?

一般的に、「女性用」とされているものは体に優しいと思われがちです。

実際に女性は、男性に比べて皮膚が薄く敏感な人が多いです。そのため女性用化粧品の多くは、男性向けのものよりも皮膚への刺激が弱い設計となっています。

このようなことから、女性向けの痔の薬であるリシーナは「体に優しい薬である」というイメージを持たれやすいです。中には、「リシーナは体に優しい=子どもに使える」と思い込んでしまうケースもあります。

ただリシーナには、他の痔の薬と同じ成分も含まれています。そのためリシーナは、他の薬に比べて体に優しいというわけではありません。

また子どもは大人よりも体が小さいため、薬の作用が強く現れます。薬には痛みを緩和するなどの主な作用だけではなく、副作用もあります。つまり子どもは大人に比べて、薬の副作用が起こりやすいのです。

そのため子供にリシーナを使いたいのであれば、まずはリシーナの効果と副作用について正しく理解することが大切です。その上で、子どもが使えるリシーナを選ぶようにしましょう。

リシーナの効果と副作用

リシーナの効果は大きく分けて、痛みやかゆみなどの緩和と炎症の抑制、痔の改善の3つがあります。

これらのうち炎症を抑える効果は、ヒドロコルチゾンや酸化亜鉛、メントールなどの成分によるものです。

ヒドロコルチゾンはステロイドの一種です。ステロイドは炎症を抑える作用の強い成分です。そのためリシーナは、炎症を抑える作用の強い痔の薬だといえます。

ただステロイドは、免疫を抑制するという負の面も持ち合わせています。

そのためステロイドを含む薬剤を使い続けると、細菌などに対する抵抗力が弱くなったり、皮膚が薄くなったりなどの副作用が起こりやすくなります。このことからステロイド入りの薬は、あな痔に使ってはいけないと指示されています。

子供に使えないリシーナとは?

リシーナには坐剤と軟膏、注入軟膏の3種類があります。

これらのうち、坐剤と注入軟膏は肛門の中に挿入・注入して使う薬です。そのためこれらの痔の薬は、肛門内側の痔に効果を発揮します。

基本的、肛門の内側に生じる痔とは、内痔核を指します。内痔核はいぼ痔の一種です。このことからいぼ痔を発症しない乳幼児には、坐剤と注入軟膏を使用する必要がないことがわかります。

それに加えて、乳幼児には坐剤と注入軟膏を使用してはいけない理由があります。

肛門の表面は、手足と同様に皮膚で覆われています。皮膚は体の一番外側にある組織であるため、さまざまな刺激物・有害物に触れやすい部分です。

体に触れた刺激物や有害物などがそのまま体内に入ると、わたしたちの生命を維持できなくなります。そのため皮膚には、触れたものが体内に入らないようにブロックする働きがあります。

一方で肛門の奥に存在している直腸の表面は、粘膜で覆われています。

粘膜は体の内側にある組織であるため、皮膚よりも防御力が低いです。そのため粘膜部分に薬を使うと、皮膚に使ったときよりも速やかに吸収されます。また吸収される薬の量も多くなりやすいです。

このとき前述のように、子どもの体には大人よりも薬の作用が強く現れます。

そのため子どもの肛門内に大人が使用する薬を入れると、子供の体に負担となる量の薬が吸収されて副作用が起こりやすくなります。このことから、肛門内に入れるタイプのリシーナは子供に使ってはいけません。

実際にどの痔の市販薬であっても、坐剤や注入軟膏などは15歳未満への使用が禁止されています。

注入軟膏を外に塗るなら大丈夫?

注入軟膏の容器は、肛門内に薬を注入できるようにスポイトの形状をしています。そのため指などに軟膏を出すと、チューブに入った軟膏と同様に肛門外側に塗ることができます。

このとき注入軟膏とチューブ入りの軟膏では、成分がほとんど一緒です。そのため「チューブ入りの軟膏を子どもに使えるならば、同じ成分である注入軟膏も子どもに使うことができるのではないか」と思う人は多いです。

確かに痔の注入軟膏の薬剤は、子どもに使っても問題のない成分で構成されています。ただリシーナを含め、痔の注入軟膏の外箱や添付文書などには「15歳未満は使用してはいけない」と記載されています。これは誤用を防ぐためです。

例えば、薬を使う際に添付文書をしっかり熟読する人はあまりいません。

そのため注入軟膏の添付文書に「子どもの肛門に軟膏を注入してはいけないが、軟膏を肛門の外側に塗る場合は子供にも使える」と記載すると、「注入軟膏は子どもに使える=子どもの肛門に軟膏を注入できる」と勘違いされてしまう可能性があります。

また添付文書を正しく理解した人であっても、時間が経過すると記憶があいまいになることがあります。そうすると、「注入軟膏は子供に使用できる」という部分しか覚えていないということが起こってしまうかもしれません。

このような勘違いが起こってしまうと、注入軟膏を子どものおしりに注入してしまうリスクが高くなります。このような誤用を防ぐために、注入軟膏の添付文書には「子どもに使用してはいけない」と書いてあるのです。

このことから子どもに薬を誤用するリスクを減らすためにも、「注入軟膏は子どもに使ってはいけない」と認識しておくことが大切です。

子どもに切れ痔が起こったらどうしたらいい?

リシーナは肛門に使用する薬です。そのためリシーナを使った後に排便すると、薬の成分が便と一緒に排出されてしまうことがあります。そのためリシーナは、排便したあとに使ってあげるようにしましょう。

また子どもの皮膚は大人よりも薄いため、薬をたっぷり塗る必要はありません。そのため子どもの肛門にリシーナを塗る際には、表面を薬が覆う程度の量を使うようにしましょう。

さらに、痔を治すためには肛門を清潔に保つことが大切です。

便に含まれている有害物質は、皮膚に刺激を与えて痔を発症・悪化させやすくします。このような有害物質は目に見えないため、しっかり拭いたつもりでも肛門に残ってしまうことがあります。

特に子どもが自分でおしりを拭く場合、おしりに汚れが溜まりやすいです。そのため子どもに痔が起こっているようであれば、肛門をこまめに洗い流すようにすることが大切です。

このとき、多くの子どもはウォッシュレットを嫌がります。嫌がる子どもに無理やりウォッシュレットを使わせると、トイレが嫌いになって便秘が起こってしまうことがあるため注意が必要です。

排便回数の多い赤ちゃん期であれば、ドレッシングなどを入れるディスペンサーボトルにぬるま湯を入れておくと便利です。そうすると、簡単に肛門を洗いやすくなります。

またおむつの中が蒸れていると、おしりの皮膚が弱ってかぶれやすくなるだけではなく、切れ痔が悪化しやすくなります。

近年の紙おむつはかなり品質が高く、数時間替えなくても尿もれが起こりません。ただ子どものおしりのことを考えるのであれば、汚れるたびにおむつを替えてあげるのが賢明だといえます。

まとめ

女性向けの痔の薬であるリシーナは、「体に優しい」というイメージを持たれがちです。そのためリシーナは、子どもに使われることが多い痔の薬です。

ただリシーナは他の薬に比べて特別体に優しいというわけではありません。またリシーナの中には、子どもに使えないタイプのものもあります。さらに痔の種類の中には、薬を使ってはいけないものもあります。

そのためリシーナを子どもに使う際には「体に優しいから大丈夫」と思い込まず、痔のタイプをしっかり見極めて適切な薬を選ぶことが大切です。また副作用の出現にも注意するようにしましょう。

そうすることで、子どもの痔の症状を緩和させてあげることができ、健康的な日々を取り戻すことができます。