多くの場合、痔には痛みを伴います。痔の痛みが起こると、歩いたり座ったりなどの日常的な行動がつらくなります。そのため痔を発症している人は、痔をなるべく悪化させないように心がけていることが多いです。

例えば肛門に便の拭き残しがあると、便に含まれる細菌などによって痔の炎症が悪化します。炎症が悪化すると、その分だけ痛みやかゆみなどが強くなります。そのため痔を生じている人は、ウォシュレットトイレなどを使用して肛門を清潔に保つ努力をしています。

このとき「痔を発症したら、肛門をきれいに保つべきである」ということを知っている人は多いです。一方でプールや海などの痔への影響を知っている人は少ないです。

そこでここでは、痔とプールや海などとの関係性と痔を生じている人がプールなどに入る際の注意点などについて解説していきます。

痔を発症しているときに海やプールに入ることはできるのか?

一般的に病気を発症すると、さまざまな行動が制限されます。

例えば「熱があるときには、お風呂に入ったり激しい運動をしたりなどしてはいけない」ということは多くの人が知っています。また腎臓の病気を発症している人は、塩分の摂取量に注意する必要があります。

このとき病気を発症している状態で「してはいけないこと」をすると、病気が治りにくくなったり悪化したりしやすくなります。また体や組織などが弱ってしまい、別の病気を併発する原因にもなることがあります。そのため病気を発症したら、病気を悪化させないための生活を送る必要があります。

これと同様に、痔を発症する前と同じ生活を続けていれば痔が治りにくくなったり悪化したりしやすくなります。そのため痔を発症したら、日常的な行動に気をつける必要があります。

基本的にはプール・海に入ることが可能

一般的にプールは、自宅のお風呂よりも不衛生だと思われています。

実際にプールには、多くの人が入ります。人の体には古い角質や皮脂などが付着しています。これらは細菌などのエサとなる物質です。そのため水の中の角質などが増えると、その分だけ有害な菌が増殖しやすくなります。

またわたしたちの皮膚には、常在菌と呼ばれる菌も多く生息しています。このような常在菌の中には、口や傷口などから体内へ侵入すると感染症を引き起こすものがあります。

さらにプールは、多くの細菌が過ごしやすい環境となっています。このようなことからプールには、多くの病原体が存在していることがわかります。

そして基本的にプールの水は、一日に何度も入れ替えられることはありません。そのためスイミングを楽しんでいる人が多いほど、プールの水が汚れやすいといえます。

このとき肛門を不潔な状態にしておくと、痔の症状が悪化しやすくなります。そのため「プールは不潔であるから、痔に悪いのではないか」と思っている人がいます。

ただ実際にはプールでは、一定時間ごとに遊離塩素の量を計測して濃度を一定に保っています。遊離塩素とは消毒効果のある塩素のことです。

このことからプールは、感染症を引き起こさない水準の清潔さが保たれているといえます。したがって基本的には、痔を発症していてもプールに入ることができます。

また海には多くの細菌や微生物などが生息しています。そしてこれらの中には、人体に有害なものもあります。

ただ体が元気であれば、海水に入ることによって病原体による悪影響を受けることはまずありません。そのため痔ができているときに海に入っても、基本的には問題ありません。

しかしながら手足などの傷に水がしみるのと同様に、痔ができているとプールの水や海水などが痔にしみることがあります。

しみるということは、患部の状態が悪化しているということを意味します。そのためプールなどの水が痔の患部にしみた場合は、スイミングをやめることが大切です。

定期的なスイミングは痔予防に効果的

水には浮力があります。そのため水に入ると、わたしたちの体は軽くなります。体が軽くなるとその分だけ筋肉が働く必要がなくなるため、体の力が抜けてリラックスしやすくなります。このことからスイミングには、リラックス効果があることがわかります。

また水には抵抗力もあります。そのため水の中で運動すると、陸上で運動するときよりも効率よく体を動かすことができます。

そしてスイミングによってリラックスしたり運動できたりすると、痔を予防・改善しやすくなります。

例えばストレスは、痔を含めてさまざまな病気の原因となります。そのためスイミングによってリラックスできると、ストレスが原因の病気を改善しやすくなります。

また運動不足になると、血液が重力に引っ張られて下半身に溜まりやすくなります。そうすると肛門付近の血行が悪くなって、組織のうっ血や皮膚の血流不足などが起こります。

肛門組織にうっ血が起こると、腫れ上がっていぼ痔を形成します。また皮膚の血流が少なくなると皮膚の弾力性が低下して裂けやすくなり、切れ痔の発症につながります。

スイミングによってリラックスしたり運動不足を解消したりできると、その分だけ痔を予防・改善しやすくなります。そのためスイミングは、痔の予防・改善に効果的なのです。

特にいぼ痔を発症している場合は、プールや海水などの浮力によっていぼ痔がおしりの皮膚と擦れにくくなります。そのためスイミングによって、いぼ痔の痛みを軽減しながら運動でき、いぼ痔を根本から治しやすくなります。

痔の人がプールや海などには入ってはいけないケースとは?

前述のように痔を発症していても、基本的にはプールや海などに入ることができます。

むしろプールや海などに入ることが問題ない状態であれば、定期的なスイミングによって体を動かすことが推奨されます。そうすることで、痔を治したり予防したりしやすくなります。

ただ痔を患っていたり治療したりする人の中には、プールや海などに入ってはいけないケースがあります。

痔の手術後には入ってはいけない

痔の手術では痔の患部を切り取るために、体に深くメスが入ります。そのため痔の手術後には、肛門付近に深い傷ができて出血が起こります。

通常、手術後の出血は数日で治まります。ただ出血が止まったということは、傷口が完全に塞がったということを意味するわけではありません。

実際に術後の傷口が治癒するためには、数週間を必要とします。そのため痔の手術後の出血が止まっていても、何らかの衝撃が加わると傷口が開いて再び出血することがあります。

このときスイミングなどの運動を行うと、傷口が開きやすくなります。また運動などによって傷口が開くと、傷口から細菌などが侵入するリスクが高くなります。

そしてプールや海などには、多くの病原体が存在しています。このことからも痔の手術を行ったら、傷口が完全に塞がるまでプールや海などに入らないことが大切です。

具体的にいうとスイミングは、術後の経過を診ている医師から運動の許可が下りてから楽しむようにしましょう。多くの場合、術後4週間程度で水泳の許可が下ります。

ただ痔の症状が重ければ、その分だけ手術の傷口も広くなります。そのため重症化した痔を手術で治療した人は、傷の治癒に4週間以上かかる可能性があることを覚悟するべきだといえます。

免疫力が低下している人は要注意

わたしたちの周りには、数え切れないほど多くの病原体が存在しています。そのため人体には、このような病原体から体を守るための機能が備わっています。これを免疫といいます。

免疫は人間が「体を守ろう」と意識しなくても、自然と働いています。そのためわたしたちは、病原体が浮遊しているプールや海などに入っても病気を発症しないのです。

ただこのような免疫は、さまざまな理由によって働きが低下します。そして免疫力が弱くなると、その分だけ感染症にかかりやすくなります。

例えば海には、ビブリオ・バルニフィカスという病原体が存在しています。この病原体が口や傷口などから侵入して体内で増殖すると、高熱が出たり皮膚が壊死したりすることがあります。重症化すると死に至ることもあります。

またプールには、レンサ球菌や黄色ブドウ球菌などの病原体が存在しています。これらは人体の周りに広く存在している細菌であるため、プールの水にも含まれています。

このとき前述のように、体が健康であれば海水やプールの水などに存在している病原体が人体に侵入して感染することはありません。実際にビブリオ・バルニフィカスは海に広く存在しているものの、海水浴によって感染症を引き起こす人は少ないです。

ただ何らかの原因によって免疫力が低下していると、健康であれば問題のない病原体であっても感染症が起こりやすくなります。そのため免疫力が低下する要因をもつ人は、健康的な人よりも感染症にかかるリスクが高いということを認識する必要があります。

このとき痔の一種である切れ痔(裂肛)は、肛門皮膚の裂け傷です。またあな痔では、おしりの皮膚に穴(膿の出口)ができることがあります。そのためこれらの痔によって皮膚に傷や穴などが開いていると、病原体が体内に侵入しやすくなります。

基本的に体の内側は、体の外側よりも抵抗力が低いです。そのため体内に病原体が入ると、感染症を発症するリスクが高くなります。このことから免疫力の低下と切れ痔・あな痔が同時に起こっていると、感染症が起こるリスクがかなり高くなることがわかります。

このときいぼ痔であれば病原体の侵入口がないため、他の痔よりは安心できると思うでしょう。

ただいぼ痔は、切れ痔を併発することが多いです。そのためいぼ痔を発症している人は、知らないうちに切れ痔も生じている可能性が高いです。

したがって重篤な感染症を防ぐためにも、痔とともに下記のような免疫力低下が起こる要素を抱えている人は、プールや海などに入ることを避けるのが懸命だといえます。

・糖尿病や腎臓病などにかかっている

病気の中には、免疫力が落ちるタイプのものがあります。

例えば糖尿病を発症すると、血液中の糖がかなり多い状態になります。このような状態は、免疫細胞が働きにくい状態です。そのため糖尿病を発症すると、免疫力が低下しやすくなります。

また腎臓病を発症していると、腎臓による体内の老廃物の処理がうまくいかなくなります。そうすると体に老廃物が溜まり、免疫機能が低下しやすくなります。

さらに肝臓も免疫力に深く関与している臓器です。そのため肝臓の病気にかかると、感染症にかかりやすくなります。そのためこのような免疫力の低下する病気にかかっている人は、痔のときにプールや海などに入らないようにしましょう。

そして薬の中には、免疫力を抑えるタイプのものがあります。このような薬は免疫が自分自身を攻撃してしまう病気(自己免疫疾患)やアレルギー性喘息などのときに用いられます。そのためこのような持病がある人も注意が必要です。

・お酒を多く飲む人

お酒に含まれるアルコールは、肝臓で分解されてやがて体外へと排出されます。そのためお酒を飲む量が増えると、その分だけ肝臓に負担がかかるようになります。

肝臓がアルコールの分解に追われるると、本来担うべき他の仕事に手が回らなくなります。その結果、免疫力が低下して感染症リスクが高くなります。

そのため肝臓病を発症しているわけではなくても、大量の飲酒を継続している人は感染症リスクが高いことを認識しておきましょう。

・感染症にかかっている人、かかった人

感染症にかかっていると、免疫が病気を治すために働くことになります。

このとき敵が多いと、その分だけ免疫にかかる負担が重くなります。そのためすでに感染症にかかっている人は、病原体に対する抵抗力が低い状態になっているといえます。

また感染症が治癒した直後は、免疫が疲弊した状態になっています。したがって感染症が治った後も、免疫力が低くなっています。

特にインフルエンザや水ぼうそうなどの症状が強い病原体による感染症は、免疫にかかる負担が重いです。そのためこのような病気にかかった直後は、海やプールなどを避けるのが無難です。

・妊娠中や産後

妊娠中の女性にとって、おなかの赤ちゃんは守るべき存在です。

ただ胎児は、母体とは異なる生命体です。そのため母体の免疫が強いと、胎児を「異物=敵である」と判断して排除しようとしてしまうことがあります。そのため妊娠中は、非妊娠時よりも免疫力が低くなりやすいです。

また出産直後は、妊娠中に分泌されていた女性ホルモンがほぼゼロの状態となります。このような女性ホルモンの中には、免疫機能に関与するものがあります。そのため出産によって女性ホルモンの分泌量が低下すると、免疫力が低下しやすくなります。

さらに産後は育児によってまともに眠れない日が続きます。寝不足は免疫力を低下させる原因になります。このようなことから妊娠中や産後などは、そうでないときに比べて感染症リスクが高いといえます。

そのため妊娠中や産後などに痔が起こっている場合、プールや海などに入ることはなるべく避けた方がいいといえます。

特に妊娠中の感染症の中には、おなかの赤ちゃんに影響があるものがあります。また妊婦が摂取したものは胎児へと運ばれるため、使用できる薬も限られます。したがっておなかの赤ちゃんを守るためにも、妊娠中はなるべく病気にかからないように留意することが大切です。

血や膿などが出ている場合は入らない

前述のように血や膿などが出ているという状態は、細菌感染が起こるリスクが高いということを意味します。ただ免疫が正常に働いていれば、細菌感染は起こりにくいです。

ただ免疫力が低下していない人であっても、血や膿などが出ている場合はプールなどに入ってはいけません。これは血や膿などが水質の低下を招くためです。

まず「プールの中に他人の血液や膿などが溶け込んでいるかもしれない」と聞い、いい思いをする人はいないでしょう。血や膿などが出る傷・病気があるのであれば、スイミングを避けて欲しい」と思う人がほとんどです。

ただ血・膿そのものは、他人の健康に害を与えるものではありません。

しかし、これらによってプールなどの水が汚れると、その分だけ細菌などが繁殖しやすくなります。したがって痔によって血や膿などが出ている場合は、プールや海などに入らないようにすることが大切です。

痔の人がプール・海に入るときの注意

これまでに述べたように痔を発症していても、出血などがなく体が元気であればスイミングを楽しむことができます。またプールなどに入っても問題ないようであれば、積極的に利用することによって痔の発症・悪化を防ぎやすくなります。

ただプールや海などに入るのが問題ない人であっても、スイミングの後はしっかり体をケアする必要があります。そしてこのようなケアを怠ると、痔が良くなるどころかかえって悪化につながるため注意が必要です。

しっかり洗い流す

前述のようにプールや海などには、さまざまな病原体が含まれています。

また海水浴の後に肌が荒れたり髪がごわついたりした経験がある人は多いでしょう。これは海に含まれる大量の塩分が、皮膚や髪などの負担となるためです。そのため海水浴の後にしっかり体を洗い流さないと、肌や髪などが荒れやすくなります。

これと同様に肛門に塩分が付着したままになっていると、肛門が荒れすくなります。つまり痔の痛みが強くなったり痔が悪化したりしやすくなるのです。

さらにプールには、皮膚に刺激を与える結合塩素という成分が含まれています。海水に含まれる塩分と同様に、結合塩素が肛門に付着していると、痔が悪化しやすくなります。

このようなことからプールや海などに入った後には、肛門をしっかり洗い流すことが大切です。

このとき石鹸をつけたボディタオルなどで肛門を擦ると、患部が荒れて痔が悪化しやすくなります。石鹸を使用する場合は、石鹸をしっかり泡立て患部に当てるようにして洗いましょう。

また可能であれば、スイミングの後はお風呂に入ることが推奨されます。お風呂に入ると、体に付着している塩分や結合塩素などが洗い流されやすくなります。そのためこれらによる痔の悪化を防ぎやすくなるのです。

体を温める

プールや海などは、基本的に体温よりも低い温度となっています。そのためこれらに入ると、体の熱が奪われて体が冷えやすくなります。

また体に水が付着していると、水分が皮膚から熱を奪って蒸発していきます。これは汗が体を冷やすのと同じメカニズムです。そのため濡れると体が冷えやすくなるのです。

そして冷えは、痔の大敵です。

体が冷えると血液の巡りが悪くなります。また血行不良が起こると、体が冷えやすくなります。そのためスイミングなどによる体の冷えをそのままにしておくと、血行不良の悪循環が起こりやすくなります。

血行不良はすべての痔の原因の一つです。このことからプールや海などに入った後は、体をしっかり温めることが大切です。

実際にプールや海などの監視員は、他の職種の人に比べて痔になりやすいことがわかっています。

これは監視員が座りっぱなしであるとともに、体が冷えやすい環境にあるためだといわれています。このことからもスイミングの後の冷えは、放置してはいけないことがわかります。

痔に水がしみても薬などを塗って入ってはいけない

傷ができていると、水道水が傷口にしみるようになります。このような痛みは、傷口に軟膏などの油分を塗ることによって防ぐことができます。傷口を覆う油脂が水を弾いて、傷口に水が入らなくなるためです。

ただプールや海などに入る際には、傷口に軟膏などを塗ってはいけません。これは水質の低下を招くためです。

傷口に塗るような油分は、そのものが人体に害を与えるわけではありません。例えば皮膚を保護する目的で使用される白色ワセリンは、口に入っても問題のない油分です。

ただ前述のように水の中に不純物が増えて水質が悪化すると、細菌などが繁殖しやすい水となります。

実際に多くの人が入るプールでは、化粧などを落としてから入るように指示されます。これは「他の人が不快に感じるから」という理由だけではなく、水質の悪化を防ぐためです。

このようなことから痔に水がしみても、軟膏などを塗ってプールなどに入ることはやめましょう。

まとめ

基本的に痔が起こっていても、プールや海などに入ることができます。

ただ手術などによって大きな傷ができていたり免疫力が低下する要因を抱えていたりする場合は、スイミングによって感染症にかかるリスクが高いです。

また免疫力が低下していると、死に至る感染症にもかかりやすくなります。そのため手術後だったり免疫力が低下したりしている人は、スイミングを避けるのが無難だといえます。

さらに血や膿などは、水を汚してプールの水を感染症リスクの高い状態にします。そのため体が元気であっても、痔によって出血や膿の排出などが起こっているのであれば、プールなどに入らないようにしましょう。

そしてこのような「プールなどに入ってはいけない理由」がないのであれば、積極的にスイミングすることをおすすめします。そうすることによって血行不良などが改善され、痔が治りやすくなります。